前回記事では『既製服縫製業ではまち針をほぼ使わずに縫う』ということを、エピソードを交えてご紹介しましたが、
この件でお問い合わせを頂いたこともあるので、今回から5回に渡ってご紹介していこうと思います。
まずは、まち針を使わずに縫うとは、どんな感じなのかということを写真を交えて説明していきます。
(※以下の写真では、下布が見え易いように右側布端を少しずらしている箇所がありますが、
実際に縫う時には、右側布端もきちんと合わせて縫って下さい)
① 二枚の布の端を合わせて縫い始め、1cmほど縫った所で、一旦止まる。
②中間地点の合印で『下の布』 を3〜5㎜ほど手前にずらした状況で、右手の指でしっかりと持つ。
(親指、人差し指、中指を使って『オッケーのポーズ』を作る感じで布を挟みます)
基本的に、何を縫うにも少しずらしながら、縫っていきます。
これがどういうことなのかと言いますと、
経験済みの方も多いと思いますが、
ミシンは、押さえの下の部分に送り歯というヤスリのようになった部分があり、しっかりと下布をとらえて、布を奥へ奥へと送っていくという構造になっています。
一方で上布は、上から押さえているだけなので、送られているわけではありません。
下の布動きに引っ張られる形で奥に送られるので、徐々に上下がずれていくことになります。
(下布だけが奥に先に送られて、上布が余る状態)
ちなみに、このズレを無くす為に、工業用にも、家庭用にも上布も送ってくれる、上送りのアタッチメントというもを付ける方法もあります。
そんな訳で『どうせずれていっちゃうんだから、最初から逆方向に少しずらしておけば良いんじゃない?』という先人達が編み出したワザという事ですね。
続きまして、
③右手は布を持ち、突っ張ったまま(自分側に手の平を見せるように)ちょっと手首をひねると、
下布がより突っ張り、上布がよりたるみます。
その状態で左手の指を使って、上の布を奥へと送ります。この左手の動きというは結構大事です。
縫っている間、左手で上布を奥へと送る動作を入れないと、いくら布をずらして縫っても、綺麗に合わないことが多いのです。
④この状態で縫い進め、合印の近くで、右手首のひねりを徐々に元に戻すと…
合印がピッタリ合ってます!、というのが理想です(´∀`)
⑤合印まで合ったら、再び縫い終わり部分をずらして持ち直し、同じように縫い進め…
⑥縫い終わりもピッタリ合ってます!、いうのが理想です(笑)
なかなか、最初からすぐにはピタリと合わないかもしれません。
布の種類や厚み、ミシンによってもズレ加減が違うので、技術者でも一枚目を試験的に縫ってみて、手の動きを確認したりします。
まず最初は、合印をずらした状態でまち針を留めておき、そのあと布をピンと張った状態で、
『縫い始めと合印の中間あたり』の布を持ち、
合印までの半分まで縫えたら、まち針を外して、次に合印部分を持って…と短い距離に区切って縫うと、ずれが少し軽減されるかと思います。
ちなみに、例えまち針を使って作業する時にも、ステッチをかける時にも、
左手で布を奥に送る動作はとても有効なので、ぜひやってみて下さい(´∀`)
さて、簡単にミシン縫いで布がズレる仕組みと、縫い方の概要をご説明させて頂きましたが、
実際にまち針を使わずに縫う前に、ちょっと試してみて頂きたいのが、
『ミシン縫いでどのくらい布がズレますか?チェック』です。
縫いズレる量は布によっても違いますが、縫う速度、縫うミシン、縫う人の手(動かし方)によっても違います。
その為、ご自分のミシンでいつも通りに縫ってみて、どのくらい縫いズレるのか確認してみると、
ご自分で縫う際のズラす分量の目安が分かります。
やり方は簡単(*´∀`*)
①シーチング位の厚さの布を用意。
(もしくはご自分でよく使う種類の布。ストレッチやニットは避けてください)
② 2枚重ねで、縦地40cm×横地15cm位のサイズに裁断。(同じ色布で良いです)
③長い方の中心位に、2枚一緒に5㎜ほどの切り込み(合印)を入れる。
④1㎝位の縫い代で、まち針をせず、いつも通りの速度、いつも通りの手つきで、
合印と縫い終わりを、なるべくずらさないように合わせながら、上から下まで縫い合わせる。
(返し針はしなくても)
この時、途中で合印や縫い終わりがズレてしまっても、無理に合わそうとせず、そのまま縫い上げてください。
さて、いかがでしたでしょうか?
合印も縫い終わりもピッタリ合わせられた方、おめでとうございます(*´∀`*)
すぐにプロと一緒に働けますね!
布によっても変わると思いますが、
布を送る手の動作、ミシンの調子(押さえと送り歯のバランスが良い)がとても良いと思われます。
では合わなかった方、どのくらいズレましたか?
あらやだ、そんなに⁉︎∑(゚Д゚)
でも大丈夫!安心してください。(*´∀`*)
次回から『ズレの多さ別の、手の動かし方』をご紹介していきたいと思います(°▽°)
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